「桜の花を風が彼方へ吹きやった。まるで水のない空にさざ波を残すように」
“風のなごり”ってなんか綺麗な響きだなってことで印象に残った和歌。風に吹かれ、桜
の花びらが音もなく舞い散る光景と、風が吹き止んだあとの静けさがしんみり伝わってく
る。失恋なのか、恋なのか、言葉では表現されていないけど空だけでなく詠み人の心にもさざ波が生じているこ
とが想像できる。短歌とか和歌とか俳句とかすごいな~っていつも思う。五・七・五とか
、五・七・五・七・七とかの短さで、しかも一定のきまりの中で、一瞬の心の模様を切り出してみせる。現
代の歌と違ってメロディーなんか無い。きっとメロディーに匹敵する何かが隠されている
。絶妙な言葉の選択と配列のみで人の心の中に入り込んでくる。敬意を込めて、“省略の美学”と僕は呼ぶ。
2011年4月25日 asa